大切なお友達が弱っていて、ハグしてあげる時などに、のど元まで出かける不思議な台詞がある。
「あたしが男だったら良かったのに」。
もちろん、男だろうが女だろうが、親しみのハグとしても性的な意味でも「抱く」のは自由なわけだけれど、そんな理屈では語りきれないものがある。
ある意味、わたしは初めから「女」だ。気まぐれで女として生きているわけではない。わたしがなぜ「女」なのかは、ネイティヴの女がなぜ自分が女に生まれたのかなど知らないように、わたしにもわからない。
ただそれでも、一面の真理として、わたしは「男だった」。
反実仮想と過去形が響き合い、過去とは仮定であり、今ここにないものはかつてあったものであることを、遠く思い出す。
「あたしが男だったら良かったのに」。
いずれにせよ、それは失われたのだ。はるか過去に、産まれてくるずっと前に。