4 VACドレッシング交換、キックボクシング、喉仏決意表明

SRS第一段階4日後 本テクストのカテゴリ「SRS記録」 については、「SRS記録について」を御一読ください。 今日は第一回のVACドレッシング交換。
 膣腔内を減圧し乾燥・治癒の促進するために挿入されているユニットを交換する。数時間前から絶飲食、点滴が始まり、最初の手術で残されているエピドゥラル・カテーテル(硬膜外ブロックのためのカテーテル)を利用して麻酔を行う。作業そのものは30分ほどで終了、二時間後にはまた歩けるようになる、とのこと。
 Yさんからはこの日11時から処置開始するので深夜2時以降絶食、と聞いていたのだけれど、before breakfastの薬と朝食が運ばれてくる。ナースに尋ねると「午後一時半から始めるので八時以降絶食になる、今は食べて大丈夫」と言う。少し不安だけれど食べてしまう。
 昨日のオーダーで何も言っていなかったので、向こうの判断でアメリカン?の朝食だった。ソーセージや卵の黄身は食べられないので残してしまう。ごめんなさい・・。
 昨日の午後あたりから抑鬱的になっている。時々パニック発作的になる。
 体力が回復してきて余裕が出て来たのかもしれないし、断薬が長引いていて、手術でホルモンバランスが急変したせいかもしれない。単に暇でおかしくなっているだけかもしれないけれど・・。
 コーディネータのYさんが来てくれる。
 移植に足りない皮膚を取ることによって残る脇腹の傷についてなど、貯めておいた質問を怒濤のようにぶつけてしまう。
 皮膚は脇腹と粗景部から取るけれど、傷の残り方にはかなり個人差があるとのこと。少しでも傷を目立たなくする方法も尋ねる。
 脇腹を伸ばすような運動には、退院後三ヶ月は待たないといけないらしい。そもそも開脚動作に最低三ヶ月はかかる。ということは、ダンスも格闘技も少なくとも三ヶ月はお預け。できたら六ヶ月はやらない方が良いらしい。
「三ヶ月でダンスはできますか?」
「うーん・・激しいダンスはちょっと・・」
「じゃぁ、キックボクシングは?」
「ダメです(即答)」
 うぐっ・・・。
 ウォーキングからはじめて体力作りだけしておこう・・・。
 悩んだ末、二回目の手術の時に喉仏を削る手術をやってもらうことにする。
 声が低くなるリスクがある、と聞いて、今回はやめておこう、と思ったのだけれど、さんざん考えてやっぱりお願いすることにした。
 後悔するかもしれないけれど、どうせ後悔するならやって後悔する方がいい。これも額の傷だ。最悪ボイストレーニングをやり直すことになっても、必ず乗り越える。
 でも追加の皮膚移植も含めて予定より大分お金がかかることになってしまった。五月いっぱいは仕事を休むつもりだったけれど、万が一声が戻らなければ、そもそも今の職場には復帰できないかもしれない(職場にはノンカムなので)。
 それでもいい。ギリギリ死なない程度の暮らしなら半年くらいはサバイバルできるだろう。人生、ここでお金使わないでいつ使うんだ。根性見せろ、あたし! タマはないけど侠気まで捨てちゃいないよっ!(下品ですいません・・)
 お昼前くらいから点滴開始。
 昼過ぎに手術室へ。
 前回の手術で残してあったエピドゥラル・カテーテルから麻酔を注入される。寝るときは時々痛くて鬱陶しかったけれど、なるほど役に立つ。『攻殻機動隊』の世界で首の後ろについているプラグのようなイメージで、腰部の局部麻酔用につないだままになっている。ちなみに、もし将来ああいうプラグが人間に付けられるとしたら、あんな金属部品じゃなくて生体材料か、とにかく何らかの形でソフトに作る工夫がされると思う。だってさ、似たのをお腹や背中につけられた経験から言うと、寝るときとか何かでぶつかったときに痛くてしょうがないよ。
 「数時間前から点滴開始、処置自体は三十分程度で終了し、二時間後には歩ける」と聞いていたので軽く考えていたけれど、思っていたよりは大掛かりだった。局部麻酔と言っても、腰部全体を麻酔するわけだから、下半身のほとんどに感覚がなくなる。意識はあるものの少し酔ったようになる(結構気持ちいいです♪)。
 これはなかなか不思議な感覚で、経験した人にしか理解できないかもしれない。上半身は通常通り、下半身も足先は感覚があるのに、お腹から下だけが麻痺している。
 麻酔は既に効いているのに、なかなかドクターが現れない。麻酔が回るのを待つものなのか、単にドクターが遅れているのか、よくわからない。みんな和気あいあいとおしゃべりしていて、わたしが退屈しないようにテレビを見せてくれる。
 意識がぼんやりしているので、またちょっとハイになって「ムエタイの放送はやってないの?」と聞いてしまう。「日本ではスモウ・レスリングの中継があるよ。violenceじゃなくてtraditional culture。ムエタイもタイの国技なんだから、放送があると思ったのにないの?」。ろれつが回らないせいか、あまり伝わらない。伝わらなくて幸いだったかも(笑)。
 やっとでドクター到着、operation開始。全然痛くない。時間的にも三十分以内だったと思う。「三時には歩ける」とドクターに言われる。今日のDr.Sは緑のバンダナをしていてかわいい。この間は万国旗のネクタイをしていた。「そのネクタイ可愛いね!」と言うと「Yeah! International!」とのお返事だった。ノリがいいね、先生!
 病室に戻る。
 間もなくしてDr.SとコーディネータのYさんがやってきて、足りない皮膚を取る相談になる。
 その間にナースがやって来て食事メニューを尋ねられたので、お昼抜きの分多めに頼んだら、後で遅いランチの注文だとわかった。ヤバい、デブる・・。
 Fried Squids with Chili Paste on RiceとSeafood Spicy Salad。前者はこの間ものすごい辛かったFried Squids with Dried Chili Paste on RiceからDriedが抜けたもの。どう違うのか楽しみで頼んでみた。
 後者のシーフードサラダをオーダーすると、コーディネータのYさんもナースも「大丈夫?」という顔。どうやら相当辛いらしい。そう言われると食べてみたくなるのが辛いもの好き。No Problemよ。
 ちなみに、これは本当に本当に辛かったです。辛いものが苦手な人は絶対無理でしょうね。わたしは残さず食べましたが。前者の炒めライスの方はあまり辛くなく普通(標準よりはもちろん辛いけれど)。
 病院の食事には西洋の食べ物もあるし、ファスト・フードをオーダーすることもできる。でもファスト・フードのくせにタイ料理より高い。タイ料理大好きのわたしとしては選択肢にも上らないけれど、spicy foodが苦手な人は他に食べ物がない。予め対策を考えて来た方が良いかもしれない。
 で、肝腎の皮膚移植と喉仏。
 線上に皮膚を切り取るフル・シックネス・スキングラフト。これについてはもう迷わない。普通は脇腹から優先的に取るらしいけれど、たるみが少ないので鼠径部から取り、足りない分を脇腹から切り取るとのこと。これはラッキー。鼠径部なら傷が残っても別に問題ない。傷跡は三カ所になる可能性が高いけれど、やってみないと何とも言えないとのこと。
 続いて喉仏。
 診察してもらうと、現状で結構目立っているので、慎重に削ってもかなり改善できるだろう、とのお返事。声についてはかなり神経質なので、グッとお腹に力を入れて「お願いします!」と決意を伝える。「最悪ボイトレやり直すことになってもいいです! やらないで後悔するより、やって後悔する!」。大げさに決意表明しているうちに、自分に酔って涙がポロリ。後で考えると恥ずかしい・・。
 この後Yさんと長い長いおしゃべりに。
 トランスの話題からYさんがここで働くに至った経緯、昔読んだマンガ、職場の性差別、タイの政治、日本の政治、本当に色々話した。
 Yさんは実にグッド・バイブレーション! わたしが一番尊敬するタイプの強く自由なフェミニスト。とてもリラックスして話せる。わたしより一回り上の世代だから、こういう生き方をするのは今より大変だったろうし、二重に尊敬できる。すっかり好き好き♪になってしまった。わたしもYさんみたいなかっこいい女になりたい。
 発声法のコツや練習方法、イントネーションの性差、表情・顔の筋肉の操作方法、歩行や立ち方、会釈から階段の昇降に至るまでの細かい所作における男性と女性の違い等々、かつてパスのためにわたしが研究したメソッドを話すと「それはまとめて公表したら? 必要としている人がいると思うよ」と言われる。
 わたしが気付く程度のことなら大抵のMtFは習得しているだろうし、ネイティウ゛の皆様が驚くほど、トランスにとっては特別なことではないだろう。既にあまりにも当たり前になってしまいうまく記述できないポイントもあるし、わたしの場合、武道やダンスの経験から自己流で身体操作を考えたので、他の人にとってはあまりわかりやすくない可能性も高い。
 とりあえず、ボイストレーニングについては、まず定評ある指導者のアドバイスを受けてみること、それから実際に習得した人に会ってみることだと思う。スポーツと一緒で、たった一度でも「できる」人を直接見ることが一番勉強になる。頭で理解しようとせず、脳裏に焼き付けたイメージを元に、自分を信じてひたすら毎日練習すること。こんなものはただのスキルなので、真面目に練習すれば誰でも一定のレベルまではいける。
 勝手なイメージかもしれないけれど、MtFは頭の固い人が多い気がする。「トランス理系説」があるくらいだからねぇ(笑)。
 Don’t think! Feel! 泣いても笑っても同じトランス人生、どうせだったらお互い楽しんで行こ♪
 タイの王族は本当にタイ国民から信頼されていて、特に今のプミポン国王の人気?は絶大らしい。タクシン首相が国王の鶴の一声で辞任に追い込まれた経緯を聞いて、わたしもすっかりファンになってしまった。プミポン国王かっこいい! 最後の最後に伝家の宝刀抜くなんて、ケンさんみたいや! 侠やね! あたしも部屋に写真飾ろうかしら。
 帰国したらタイや東南アジアの歴史を勉強しよう。面白いなぁ。
 全然関係ないけれど、今日交換したVACドレッシング、膣腔の状態を良好に保ってくれるとても有り難いもので、壁に据え付けられた減圧装置?に接続する仕組みになっている。外出して戻って来た時には、もう一度チューブをつないでスイッチを入れる。大体メータが100を指すところに調整することになっている。
 ところがこの装置、なかなか思うところで針が止まってくれない。100丁度のまま元栓だけ切って、戻ってからスイッチを戻しても、うまく元の圧力にならず、微妙なバルブ操作で修正することになる。古い湯沸かし器の温度調節みたい(笑)。ウチのお風呂もこんな感じよ〜。
 このアナログな感じが可愛い。壊れたりしたらさすがに困るけれど、しっかり減圧して助けてくれているんだから、機械一つにも感謝感謝。

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