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「トランスサイトの成れの果て」

 以下の文章はish☆石倉由のブログに掲載していたもので 、閲覧者のほとんどがトランスについて何も知らないことから、一応の乱暴な紹介をしたものです。こちらにないのもどうかと思うので、そのまま転載します。
 恐ろしく乱暴でネタ的ですが、言いたいことの半分くらいは言えています。

 ちなみに「トランスジェンダー」という言い方にも、社会運動や「生き方」的匂いがしすぎてなじめません。さらに本音を言えば、「ジェンダー」などという言葉すら胡散臭いです。その辺はそのうち放言するとして、とりえあえずアップしておきます。

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 ここでの「トランス」は「トランスジェンダー」の略です。「トランスジェンダー」という言葉には、「狭義の意味」やら「広義の意味」やらがあって、しかも「狭義」でも定義が曖昧です。テキトーで便利な言葉です。
 このサイトでは、ものすごい広い意味で使っています。「オカマ」とか「女装」とか「ニューハーフ」とか言えばわかりやすいのでしょうけれど、アクが強すぎるので「トランス」と言ってお茶を濁しているのです。変圧器みたいでイイ感じです。

 一般的には、「TV/TG/TS」という三つ組(TransVestite、TransGender、TransSexual)が知られています。平たく言えば、「異性装」TV(CD:CrossDresserとも言う)と「本気で望む性別で生きたい」TS、そして「そこまでハッキリしない」TGという三点セットです。もう少し正確には、TVは自分の性別自体には疑問を持たないが外見等で異なる性を望み、TGは社会的性別の変更を望み、TSは外科的な処置がなければ満足できない、といったところでしょうか。TVとTSは一応医学用語ですが、TGには明確な定義がありません。TransGenderという語は、「TVとTSの間くらい」「ホルモンはやっているけどSRS(sex reasignment sugery性別再適合手術)までは望んでいない」といったようないいかげんな意味と、この三つを包括して一緒くたにしたさらに曖昧な使い方の二つがあるのです。
 これらはいずれも、「性同一性障害(GID:gender identity disorder)」というヤツを巡って形成された言説です。そっち系では良くも悪くも言葉が整理されているので、いささか気が進まいながらも、不案内すぎる方のために勝手にリンクしておきます。
Trans-Net Japan(TSとTGを支える人々の会) 用語集 自助グループ。
gid.jp 自助グループ。
Trans Sexual Forum in Japan TS運営によるサイト。
トランスジェンダージャパン 相談電話もあり。
EON/W  T's用語集 風俗系からGID系まで幅広い。

書籍では、
『性同一性障害って何?』緑風出版 教科書的Q&A本。当事者主体。
『性同一性障害』吉永みち子 集英社新書 ネイティヴ女性記者による一般書。バランスが良い。
『性転換手術は許されるのか?性同一性障害と性のあり方 』山内俊雄 明石書店  日本精神神経学会「性同一性障害に関する特別委員会」委員長による一般向け書籍。医療者の中心にいる人はちゃんとマトモだとわかる。
 など。

 公平を期すためにニューハーフ系女装系も探検してみて下さい。いずれのサイトも、お食事時は避けた方が良いでしょう。

 当サイトは一応「トランスサイトの成れの果て」となっていますが、いわゆる「トランス系サイト」(実質CD中心)の標準からは大きく外れています。また、イシクラの生き方自体、一般的なTS/TGからはズレていると思います。「オンナとして」生きているTS/TG系のサイトでは、顔出ししてわざわざ戸籍上の性別を曝すことはあまりありませんし、逆にCD/TV系のサイト運営者は日常を「オトコとして」送っていたり、そもそも「オンナとして」生活しようとしていなかったりします。
 ですから、イシクラを基準にトランスを理解するのは極めて危険です。本当に関心のある方は、色々なサイトや書籍等に真面目にあたって下さい。まったくの門外漢の方にとっては、ショボすぎる先入観を解除する契機にはなるのではないかと思います。

 ただし、上記サイト等にあるような理論的構成について、わたしが全面的賛意を持っているわけではありません。先の「三つ組理論」もTS/GID系のセオリーから導出されるものですが、わたし個人はちっとも信じていません。確かにわかりやすいので社会生活上は便利ですが、ここまで擦り寄らないでもいいような気がします。まぁ、生きるためのツールですから、都合の良い時だけ利用すればいいのでしょう。精神病院とかインターネットと一緒です
 繰り返しますが、このサイトでの「トランス」は、テキトーな意味で使っています。そして、頭が固くてモテないTSさんには悪いですが、その使い方こそ正しい使い方です、と断言しておきます。
 当サイトでの「トランス」という語には、「女装して殿方にfuckして頂きたい変態さん」から「周囲に戸籍上の性別をまったく悟られずに暮らしている人」まで、まとめて背負って頂きます。この世界には、本当に色々なヒトがいます。一々区別していると日が暮れてしまう、というより時間のムダなので、こうしておきます。
 ちなみに、トランスじゃない「生まれながらのヒト」をネイティヴと呼びます。

 「なんだかよくわかんねー」という方がいたら、とりあえず「電柱の上の方についているデッカイやつ」と覚えておいて下さい。大体当たってます

 そう言いつつ、TG/TSくさいこともアリバイ的にちょっと書いておきます。
 性自認(自分をどちらの性別と認識するか、あるいはどちらともしないか)と、性対象(どちらの性を恋愛対象とするか、両方か、ないか)を独立した条件として考える枠組みを手にしておいた方が、この手の世界を歩いていく上で、人を不快にさせる可能性を低くできるでしょう。また、職業としての「ニューハーフ」と性自認、性対象は原則として別問題です。
 要するに、「女のカッコでウロウロしていたり、まるっきり女にしか見えないヤツでも、男好きとは限らないからひっかける時は一応気をつけとけ」ということです。
 戸籍上の性別、性自認、性対象等を一度別個に考えた上で、再度その人の全体像を掴むように心掛ける程度の労力は、払って損はありません。
 ただし、理論的な枠組みというのは良くも悪くも理屈にすぎませんから、一通り通念として眺めた上で、時間をかけて個人に相対する必要があります。一般的な人間関係と同じです。加えて、批評の一般原則として、理論というのは、それがどんな立場からどんな人が発しているのか、という点を理解してこそ意味があるものです。
 この「色んな性を別々に考える」というやり方自体、ものすごい偏った視点からのものでしかないのです。はっきり言えば、TS至上的な側面があると言わざるを得ません。ただ、わかりやすいことはわかりやすいですし、恐ろしく固定観念でガチガチになっている人に最初の鍵を渡す効果というのはあります。便利なこともありますから、一度知識として持ってから要らなくなれば捨てればよいことでしょう。

 ついでながら、「ニューハーフ」「オカマ」を連発して憚らないわたしのようなチンピラトランスは、「ちゃんとしたTS」の方々からかなり不快な存在として見られている可能性もあることを、予めおことわりしておきます。
 「ニューハーフ」というのはあくまで職業名、しかも「男の仕事」であって(女には絶対できないでしょう?)、セクシュアリティを指す言葉ではありません。「オカマ」に至っては差別用語なのだそうです。こういった呼称は「見せ物、色物としてのトランス」という古典的イメージを助長するもので、不愉快に感じる当事者も少なくないのです。
 ただ、わたしの場合は仕事としての「ニューハーフ」にも多少コミットしていた上、ニューハーフであることをアイデンティティとして引き受ける生き方にも共感するので、遠慮なく使わせて頂いている次第です。大体、こんな風俗的用語が論理的に「男性性」を示すものでしかないなどということは2秒も考えれば誰でもわかることであり、言いたいヤツには言わせておいて、間抜けぶりを笑ってやれば良いのです。何よりわかりやすいので、ツカミにぴったりです。

 わたしとしては、「ニューハーフ系」「TS/GID系」のどちらも否定する気はないですし、どちらについても丸ごと認める考えもないです。この両者に「女装系」を加えてみたとしても、やはり同じです(単なる趣味としては、一部の「女装」系カルチャーにはシンパシーを感じます。辛気くさくないので)。
 ただ、いずれの立場の足をひっぱるつもりもないですし、そもそも人を立場で切り分けるのも馬鹿げているのですが、迷惑をかけていそうな点についてはなるべくフォローしていきたいです。こんなトコロにこっそりしょうもない屁理屈を書き付けているのも、せめてもの罪償いのつもりです。


 人付き合いとしては、個々人の問題しかないでしょう。たくさんの人に出会い、考え続け、今も歩いていますが、結局は出たとこ勝負でしか何も判断できません。
 一つだけはっきりしているのは、「会ってナンボ」ということです。顔を見て話をして、すべてはそれからです。こんなことは、普通に暮らしていれば言わずもがなのことなのですが、余りにも妄想スパークな人も中にはいらっしゃるので、一応。

 『押井守』KAWADE夢ムックには「ガイノイド・ニューハーフ・素子の去った後」という試論を寄稿しています。従来のトランスを巡る言説に煮え切らないものを感じている方は、一つの揺さぶりの方向として是非御一読下さい。内容的にはかなり偏っています。
 近い内にまとまったものを出す予定です。


 ……で、終わりにした方が無愛想でカッコイイのですが、一応わかりやすい自己紹介もメモしておきます。
 診断名としてはMtFTS(male to female transsexual)、SRS(sex reassignment sugery)希望ということになっています。女装系出身、元職業ニューハーフ、現在は平凡な?トランスジェンダーとして半潜伏(戸籍上の性別を割と隠して生活)。でもある程度親しい人はみんな素性を知っていますし、できるだけ隠さない方針です。

 ただ、こういう自爆的なサイトをやっていると、極稀に「女が苦手だから」といって寄ってくる救いようのない白痴さん(多分貧乏)や、果ては「あたしも子供の頃男の子に間違えられたんですぅ」「ゲイの人に興味があるんですよぉ」などというバカ女様(多分デブ)がいらっしゃいますが、大変な勘違いですので、念のため。隠しだてはしたくないですが、これ以上カリカリして正常な方々の方にまで飛ばっちりをやってしまうと社会生活上不便なので、勘弁して下さい。


 癒しが欲しいならハトでも飼っとけ

2004年10月25日 | トランス雑感 | トラックバック| よろしければクリックして下さい→人気blogランキング