2 子供欲しい？
SRS第一段階2日後
午前七時朝食。タイ風おかゆ。
午前八時、身体を拭いてもらう。
午前九時半くらい、ドクターとYさんがやってくる。
会陰部の痛みは、ガスがたまっているせいかもしれない、と言われる。確かに膨満感がある。元々わたしはガスが貯まり易い体質なので、そのせいで膣の側が圧迫されているのかもしれない。
立つ許可が出る。
そう言われても怖くてなかなかできない。座ることすら、患部を圧迫しそうで不安。
VAC（Vacuum Assisted Closure 膣腔の圧力を下げ肉芽組織の成長を促し治癒を高める）のプラグを外してそろそろ立ち上がってみると、びっくりするくらい足が萎えている。ものすごい目眩がしてすぐベッドに戻る。
とりあえずもうちょっと身体を起こして練習するところから始めないと厳しい感触。
昼食後少しお昼寝して、再度歩行トライ。VACのプラグを外して、そろそろ立ち上がる。意識してゆっくり呼吸していれば大丈夫。歩ける歩ける。すごくノロノロで、がに股だけれど、とにかく自力で動いてる！ それだけのことなのに、なんだかすごい自信が湧いてくる。
ナースセンターで昨日opだった日本人のことを聞き、訪ねてみる。
Yさんがまた寄ってくれて、毎度ながら引き止めてしまう。Yさんはサバサバしているしフェミっぽくてすごく接し易い人。話していてとても楽しい。
トランス談義の中で「子供が欲しいか」という話題になる。わたしは子供が欲しいという願望がまったくないのだけれど、YさんによるとそういうMtFは珍しいとのこと。どうしても欲しければ親のいない子供を引き取りたい、と言うと、この点でもYさんと意見が一致。しかしどうやら世間の人はそうは思わないらしい。
ある不妊治療に関する掲示板で「養子を取るという方法はどうなんですか」という書き込みがあったところ、猛烈なバッシングが起こったという。「なんて失礼なことを言うんですか」等々。さっぱり意味がわからない。
養子を取るのは妊娠して子供を産むより劣ったことなのか？ 親子の情に遺伝子上のつながりなど関係ないだろう。仮に今、自分がガード下で拾われた子で、親だと思っていた人と血のつながりがない、とわかったとしても、彼らに対する気持ちはまったく変化しない。
世の中まだまだ「血」への信仰が強いのだなぁ、と恐ろしい気持ちになる。
Yさんのことはすっかり気に入ってしまった。わたしの女友達はみんなそうなのだけれど「女にも色々いるからね〜」という気持ちのよいフェミ意識のある女性は話していて楽しい。
彼女はMtFのボイストレーニングで有名な櫻庭先生と雰囲気が似ている。年齢的にも近そうだし、サバサバしていて聡明で、当事者でも家族・友人でも医師でもないけれどMtFと異様に多く接している。
ちょっとレアな共通項なので、いつかこの二人が会って話したら面白いだろうなぁ、と思う。二人ともわたしの恩人だしね♪ きっと気が合うに違いない。
ボイトレと言って思い出したけれど、手術後どうも声のトーンが戻らない。というか、元々低かった気もしてきた（笑）。
Yさんはしきりに「○○さんは声がパスしてるからね〜」と言ってくれるけれど、わたしは未だに自信がない。確かに昔の声を出してみるとまったく変わってはいるのだけれど（かなりインパクトのある瞬間芸）、やっぱりハスキーなのよねぇ。
前に会社で「お酒飲み過ぎ？」と言われた。「最初ニューハーフの人かと思ったよ〜」と言われたこともある。当たってるんやけど（笑）。
意識レベルが高い時は問題ないのだけれど、気の合う人とおしゃべりしていると、知らない間に声のレベルが落ちている気がする。とにかく尋常じゃなくおしゃべりだからね・・そっちが問題かも。
一回目のVACドレッシング交換が明後日午前11時に決定。標準的なら、二回の交換があって、それから陰嚢皮膚移植手術がある。皮膚移植の後の絶対安静が一番厳しいみたい。一難去ってまた一難ね・・。
テレビではタクシン首相の自認表明のニュースが流れている。
どう見てもタクシン首相は色が白すぎると思うのだけれど、美白の秘訣とかあるのかしら（後に友人から聞いて、タクシン首相は北部タイ出身の華僑系だから色白、と判明）。
夕飯はFried Squids with Dried Chilli Paste on Rice。辛い！ 辛いもの大好きなわたしが辛いと言うのだから、相当なレベル。
ついてきたSoy sourceというのをどちゃっとかけてしまったのだけれど、これが辛さの原因？ てっきり普通の醤油だと思ったけれど、タイ風に激辛だったのかも・・とにかく辛い（笑）。
