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運転免許試験場 ブルース・真理・小池 | eternal transition::ジェンダー/セクシュアリティ
Categories: 思想 文学 社会

運転免許試験場 ブルース・真理・小池

 運転免許の更新に行ってきました。

 どこの都道府県でも、運転免許試験場というのは不便なところにあります。人の住んでいなかったようなところが無理矢理切り開かれてできるのが、運転免許試験場です。
 陰気で憂鬱なところですが、そういうところにこそ赴くべきでしょう。少なくとも時には覗いて確認しておきたい種類の場所です。
 「西東京お散歩随想」でも書きましたが、真理は常に周縁に宿ります。都市の果てる場所には、システムの内部で無きものと扱われながら、実はシステム自体を下支えしているものが露出しています。ゴミ焼却場や墓地などが良い例ですし、運転免許試験場もこの系譜に属するのです。
 そういう場所に集まるのは、大抵ヤンキーです。境界の峠を攻めるのもヤンキーです。彼らは一見反抗的なようで、早くに結婚して子供を作り、隠蔽された労働者層を形成しシステムの土台となります。「労働者階級の消滅」などという幻想は周縁で潰えます。ヴァーチャルなものが無いものを有るかのように見せるというよりはむしろ、有るものを無いかのように見せていることを、文字どおりに見せつけられるのです。
 職業安定所や旅券事務所にも似た風景を見られます。地理的には周縁ではないですが、都市の中に開いたある種の裂け目であるところが共通しています。

 さて、我が家はそんな試験場から徒歩一時間程度のところにあります。うちの立地からして既にマージナルです。お散歩がてらぶらぶら歩いて行ってきました。
 実は待ちわびていた日です。
 戸籍改名して現在の名前が裏書きされてはいたのですが、表は前のまま、写真もかなりヤバいことになっています。とても身分証明になりません。
 窓口に前の免許を出すと、「代わりに来てくれたの?」「す、すいません、本人です……」というお約束のやりとりになります。そんな機会もこの更新でかなり少なくなるでしょう。なんと言っても、正しい名前の写真付き証明書が遂に手に入ったのです。
 実は中免も持っているのですが、全然運転していないので30分の優良講習です。普通は退屈でしょうし、わたしもその覚悟だったのですが、意外と楽しめました。
 まず、例の事故ビデオです。テレビなし生活のせいで、映像が動くだけでも結構感動します。人が轢かれそうなところでストップモーションになると、『列車の到着』の観客並みに痛い気持ちになってしまいました。
 世間に疎いので知らなかったのですが、運転免許経歴書なる制度ができているようですね。「運転はしないので免許は返すが、身分証明がないと困る」という人のために、言わば「運転できない免許証」を発行してくれるのです。お年寄りなどには便利が良いのでしょうね。
 かく言うわたしも、仕事で必要にならなければもう一生運転しなさそうです。性格的に、激しく適性がないですから。
 試験場の廊下で、素敵なお写真を発見しました。

 「おい、小池」。
 どことなく、選挙ポスターとも趣きが似ています。妙に訴えかけてくるプレッシャーがあります。
 不特定多数の人が見るのに小池さんにだけ呼び掛けていて、しかも小池じゃない人間までもが小池のように振り向いてしまうメッセージです。
 見る者を小池化するポスターです。
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