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-2 渡航 | eternal transition::ジェンダー/セクシュアリティ
Categories: SRS記録

-2 渡航

SRS第一段階2日前 本テクストのカテゴリ「SRS記録」 については、「SRS記録について」を御一読ください。 ほとんど信じられないことに、とうとうこの日がやってきた。
 ・・・と、SRSについての思いのたけを語り出すときりがないので、とりあえず出来事だけ書きます(笑)。
 五時起きで支度を始める。ほとんど寝ていない。土曜日出発だったせいもあり、体力的・精神的に死に切っている。
 感涙ものなことに、お友達のAちゃんが成田まで見送りに来てくれる。それなのにわたしは情緒不安定で、いつも以上に殺伐とした状態。意識朦朧で超不機嫌。毎度ながら本当にごめん・・。
 海外旅行はこれが人生二回目。旅慣れないので要領を得ない。
 グズグズしているうちにギリギリの時間になってしまう。チェックインは多分わたしが一番最後。「走れ走れ」って感じで、Aちゃんとは挨拶もそこそこに別れる。
 ここまで追いつめられてやっと気付いたけれど、飛行機って「まぁ次ので」ってわけにはいかないのよね(笑)。常に基本的なところはシッカリ抜けていて先が思いやられます・・・。
 乗客は家族連れが多い。機内全体で子供がうるさく、隣の積ではおばちゃんと孫のやり取りが正直ちょっと鬱陶しい。どうしてだろう?と思ったら、春休みなのね。そういうリズムをすっかり忘れていました。行き先が行き先だけに、一人のお客さんなんて数えるほどしかいなかったんじゃないかな。
 離陸後はひたすら爆睡。「ナルニア国物語」が上映されていて、とぎれとぎれに画面だけ見る。持参した本の中で一番下らないものに手をつけると、あっという間に読み終わってしまう。
 機内食は普通。対国際航空なのでタイ料理かと思っていたら、日本の家庭料理をさらに味気なくしたというか、給食のようなランチ。わたしが作ったみたいな食べ物でちょっと笑える。久々に自炊以外の食事を口にして新鮮(普段はお弁当持参)。
 寝て食べると素晴らしい勢いで心身が復活してくる。やっぱり寝ないとダメね。こういう基本的なことをいつになったら学習できるのかしら・・・。
 バンコクでトランジット。「永遠のトランジット」とかサブタイトルにつけてしまっただけあって、ここでもノロマぶりを発揮。ぐるぐる迷った挙げ句ビリになり、カウンタのお姉さんに「Run! Run!」と言われてしまう。空港の外に出なかったのでよくわからないけれど、思ったほど暑くなく、曇り空で味気なさそうな街に見えた。
 バンコクからプーケットはあっという間。東京から大阪くらいなのかなぁ。
 とうとうやってきましたよ。遂に遂に、プーケット!
 空港を降りた第一印象は「キレイ」。リゾートだけあってバンコクとはエライ違いです。
 蒸し蒸ししてはいるものの、思ったほど暑くない。外に出ると運転手さんがわたしの名前を書いたボードを持ってくれていてすぐにわかる。
 タイについてもプーケットについてもまるで予備知識なく来てしまったけれど、漠然とイメージしていた「とても違うところ」では全然なかった。日本とあまり変わらない、というか、東京なんかよりずっと「普通」と感じられる。
 タイについてよくご存知ない方は「発展途上国のさらに田舎の島」と思ってしまうかもしれませんが(そんな無知はわたしだけ?)、全然そんな雰囲気ではありません。「東南アジアの優等生」と言われるタイは、80年代以降素晴らしい経済成長を遂げ、インフラ整備もかなり進んでいます。プーケットについては、だだっぴろいところなので建物は大きいし広い道路がずーっと伸びていますけれどね。わたしの知っている範囲では滋賀県の風景にちょっと似ています(笑)。交通量は滋賀より絶対多いです。
 病院までの道のりで一番印象的だったのは、電柱の形。日本と違ってシンプルに電線をぶら下げている形。トランスというものが見当たりません。電圧の違いのせいでしょうか。南国っぽくて素敵でした(って、こんなところに注目しているのはわたしくらいでしょうけれど・・)。
 運転手さんが「東京から来たの?」「じゃぁ○○は友達?」と聞いてくれるも、わたしがこの病院関係で知り合いなのは二人だけ。そんな横のつながりないですよ〜(笑)。
 見せてくれた写真のMtFがすごく可愛くでうっとりしてしまう。わたしも頑張らないと・・。
 それにしてもタイ人の英語はわからない。きっと向こうも「日本人の英語はわかんねー」と思っていることだろうけれど(笑)、覚悟して行った方がいいです。「プーケットははじめて?」と聞かれたとき、firstという単語を十回くらい確認してやっと理解しました。
 病院到着。
 思ったより小さな病院。
 いえ、明らかに「大病院」ではあるのですが、なんとなく大学病院のようなところをイメージしていたので、少し外れでした。日本の市中中規模病院くらいのスケール。雰囲気はオープンな感じで、日本の病院に比べるとずっとリラックスしたムードです。なんとなく「こういうところの方が治りも早いんじゃないかなぁ」という気がしました。
 簡単なコミュニケーションに異様に手間取りながら、パスポートを確認され、簡単な健康診断を受ける。レントゲンを撮るときの「息を吸って・・ハイ止めて」がわからない(笑)。
 待ち時間の間、お姉さんに「Japanese? Beautiful」と言われてテヘへと思う。でも体重を測ると太っていてショック。
 できた診察券にはMsの文字。こういう配慮が泣けます。日本でGIDの治療に行っても、戸籍を変えない限りMtFは絶対Maleです。まぁそんな細かいことに一々不平は言いませんが、この病院では染色体上の身分を明らかにしてもずっとリラックスしていられて気持ちがいい。
 考えてみると、わたしの日常は緊張の連続です。別に仕事が大変ということは全然ないのですが、「潜伏」という身分は意識できないレベルで心身に相当負担をかけていると思います。会社の人間と必要以上に親しくならないよう気をつけていますし、場合によっては一瞬で全員が敵になる覚悟はしています。
 大体、今こうしてタイにいること、タイに来た目的、これらについて日常接する人間に決して漏らすことはできません。もちろんプライベートについてあれこれ職場で伝える必要もないのですが、それにしても何か悪いことでもしているかのように口実や都合をつけて覆い隠さなければならないのには、少し納得のいかないものがあります。
 これは深い問題で、こう書いたからといって潜伏を否定したいわけではないのです。また完全なる解放などあるはずがないのは言わずもがなです。所詮職場など「アリバイ」でつながっている同士ですから、戸籍を変更すれば「アリバイ」に一貫性ができて状況が改善するのかもしれませんが、まだ何とも言えないです。
 また見た目のパスとかいう問題ではなくて、例えビジュアル的なパスが完璧に近かったとしても、依然として不安は残ります。わたしは未だに街を歩いていて突然パニック発作に襲われることがあります。
 加えて「東京」という場所自体が、そもそも人の頭をおかしくさせていますよね(笑)。
 まぁこれはトランス云々とは関係ないですし、わたしが田舎者なだけかもしれませんが、独特の「受け流して生きるメソッド」を深く刷り込まれていないと、非常に寿命を縮める都市でしょう。少なくともわたしは毎日憎悪でいっぱいです。年中核戦争望んでます。
 それに比べるとこの土地のなんと「自然」なことか!
 もう、ほんと安心。リラックス。普通。
 いつもの三角な目はどこへやら、ずっとニコニコしてしまうし、こっちが笑顔だと向こうも笑顔になってくれます。あぁ、幸せ。
 SRSをきっかけに?タイ大好きになった友人がいますが、それもよくわかる気がしました。
 病室はシンプルな個室。ビジネスホテルよりちょっと広いくらいですが、窓が大きくてなかなか居心地良し。
 テレビがあるのでチャンネルをぐるぐるしてみると、NHK BSが見られました。うちにはテレビというものがないので、タイに来て久しぶりに映像付きの日本のニュースを見ました(笑)。
 夕飯のメニューが日本語付きで大助かり。幸いわたしは辛いもの大好きなので、spicy foodもまったく問題なし。辛みスパイスのようなもので辛さ調整できるようになっていましたが、全部かけてしまいました。
 ハッキリ言って、普通のタイ人より辛さに強い自信あります。
 SRSに来たのに太って帰りそうな不吉な予感が・・・。
追記:
1 Windowsなら病院のLANにつなげられるらしいけれど、ノートパソコンはiBookしかないわたし。一応ダイヤルアップの方法は調べてから来たもののうまくいかず。明日聞いてみよう。
2 病室にちっこいヤモリ?みたいなのがいるんですけど・・・(後で聞いたところでは、虫を食べてくれるので良いヒトみたいです)。

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