Wired Newsより。
米国内で、『MDMA』(エクスタシー)や『シロシビン』といった幻覚剤が、ゆっくりと、しかし確実に処方薬へと地位を変えつつある。これらの薬が、末期ガン、強迫性神経症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などさまざまな症状に苦しむ人々を救うと考えている科学者たちの熱意の賜物だ。 シロシビン(Nジメチルートリプタミン)というのは、ヒカゲシビレタケ、センボンサイギョウガサなどのいわゆる「マジックマッシュルーム」に含まれている幻覚成分で、セロトニンに構造が似ているためセロトニン受容体に作用し、幻覚を引き起こすと考えられています。強迫神経症やPTSDにはSSRIが処方されることがありますし、「そういうこともあるのかな」と思っていたのですが、気になったのは同記事の中で紹介されていた「シロシビンが群発頭痛に劇的に効いた」というケースです。
群発頭痛は、片頭痛・緊張型頭痛と並び、脳などの疾患を原因としない機能性頭痛(一次性頭痛)の一種です。片側の目の奥が抉られるように激しく痛み、半年から二年に一度、一二か月間、連日起こるのを特徴としています。群発期には飲酒により発作が誘発されます。予防的にエルタゴミン製剤や副腎皮質ステロイド剤が処方されますが、発作時にはあまり効かず、酸素吸入やスマトリプタン(商品名イミグラン)が有効なようです。ただし速効性のあるイミグラン点鼻薬は群発頭痛では保険適用とはなりません。現在は片頭痛の治療薬としてのみ認可されていて、血管内壁のセロトニン受容体(5-HT_1B/1D)に働き、拡張した血管を収縮させることにより片頭痛をやわらげるとされています。
シロシジンとイミグラン、両方ともセロトニン受容体に作用するわけですが、一口にセロトニン受容体と言っても多くの種類があり、現在7つのファミリー、14種類のサブタイプが明らかにされています。シロシビンについては手元に資料もなく調べてもわからなかったのですが、一般に幻覚に関係するとされているのは5-HT_2Aですし、なんとなく似て非なる機序で働いている気がします。こういうことを書いておくと突っ込んでくれそうな知人がいるので、情報を待ちましょう(笑)。
念のためですが、このことからもわかるように、SSRIを飲んでも幻覚が見えたり飛んだりできるわけではないですから、濫用したり逆に偏見で見たりしないように。
ちなみに、リドカインという局所麻酔薬が群発頭痛に有効なようで、これが1ml中5mg含まれたベンザALスプレーの効果が報告されているページがあります。
参考:
イミグラン
頭痛大学 すごい情報量です。
全国慢性頭痛友の会
Amazon:
『マジック・マッシュルーム完全栽培マニュアル』真矢一成 1,470円
『セロトニンと神経細胞・脳・薬物』 鈴木映二 2,310円 お勧めです。